魔法使いの弟子の見習い書記官の「研究手帖」

「芸術新潮」2022年6月号 表紙作画風景の「本棚」を読む
<開設 2022/06/04 → 最終更新 2022/08/14>
≪Prefazione≫
山田先生の手になる繊細な作画の様子がつまびらかになる、「芸術新潮」2022年6月号の表紙作画風景。
その風景の背後に映り込んだ「本棚」もまた、この特集記事の読みどころなのでした。
「芸術新潮」2022年6月号の33ページに掲載された写真や、Youtube上に掲載された動画から、そこに置かれている各種のアイテムを読み解いてみることにいたしましょう。

※ 本棚の画像の左上端から順番にアイテム番号を割り振っています。
XXX) 青色の番号は、山田先生の漫画やイラストが掲載されているもの。
XXX) 赤色の番号は、作画や作品構想の資料と思われるもの。
XXX) 黒い番号は、関係する作家の方の作品などで、おそらく山田先生の絵は掲載されていないもの。

※ 各アイテムのリンク先は、できれば出版社やメーカーなどにしたかったのですが、古いものもあるため、状況によって「読書メーター」や古書店にも頼っています。



< Ⅰ 左棚の上段 > (* 左から)

001) 森博嗣 「ヴォイド・シェイパ」 講談社ノベルス/2021年
https://bookclub.kodansha.co.jp/buy?item=0000344425
002) 森博嗣 「ブラッド・スクーパ」 講談社ノベルス/2021年
https://bookclub.kodansha.co.jp/buy?item=0000344429
003) 森博嗣 「スカル・ブレ-カ」 講談社ノベルス/2021年
https://bookclub.kodansha.co.jp/buy?item=0000344431
004) 森博嗣 「フォグ・ハイダ」 講談社ノベルス/2021年
https://bookclub.kodansha.co.jp/buy?item=0000344433
005) 森博嗣 「マインド・クァンチャ」 講談社ノベルス/2021年
https://bookclub.kodansha.co.jp/buy?item=0000344434
(** 森博嗣先生の剣豪小説シリーズ。山田先生は「講談社ノベルス」版の各巻で「装画」と「モノクロ挿絵」を描かれています。全5巻完結。デビュー以前からの長いおつきあいの森先生と山田先生。おふたりにまつわる資料の断片は、こちらにちらっとまとめてあったりします。「ふたつの軌道の不連続交点 -とある漫画家と小説家の場合」 ** discontinuous intersection

006) 小野不由美 「白銀の墟 玄の月(一)」 新潮文庫/2019年
https://www.shinchosha.co.jp/book/124062/
007) 小野不由美 「白銀の墟 玄の月(二)」 新潮文庫/2019年
https://www.shinchosha.co.jp/book/124063/
008) 小野不由美 「白銀の墟 玄の月(三)」 新潮文庫/2019年
https://www.shinchosha.co.jp/book/124064/
009) 小野不由美 「白銀の墟 玄の月(四)」 新潮文庫/2019年
https://www.shinchosha.co.jp/book/124065/
010) 小野不由美 「魔性の子」 新潮文庫/2012年
https://www.shinchosha.co.jp/book/124051/
011) 小野不由美 「月の影 影の海(下)」 新潮文庫/2012年
https://www.shinchosha.co.jp/book/124053/
012) 小野不由美 「東の海神 西の滄海」 新潮文庫/2012年
https://www.shinchosha.co.jp/book/124055/
013) 小野不由美 「風の万里 黎明の空(上)」 新潮文庫/2013年
https://www.shinchosha.co.jp/book/124056/
014) 小野不由美 「風の万里 黎明の空(下)」 新潮文庫/2013年
https://www.shinchosha.co.jp/book/124057/
015) 小野不由美 「丕緒の鳥」 新潮文庫/2013年
https://www.shinchosha.co.jp/book/124058/
016) 小野不由美 「図南の翼」 新潮文庫/2013年
https://www.shinchosha.co.jp/book/124059/
017) 小野不由美 「華胥の幽夢」 新潮文庫/2013年
https://www.shinchosha.co.jp/book/124060/
(** 小野不由美先生の「十二国記」シリーズ。山田先生は各巻で「装画」と「モノクロ挿絵」を描かれています。今回の特集記事ではじめて気がついたという方もいらしたようですが、「新潮文庫版」と「講談社X文庫ホワイトハート版」では、違うイラストが使用されています。このうち「ホワイトハート版」は、画集第一集「久遠の庭」に収録。「新潮文庫版」がまとまる第二集「青陽の曲」も楽しみですね。そういえば芸術新潮のインタビューの中では、平井和正先生についての言及もありました。角川文庫版「真幻魔大戦」1巻に添えられた解説では、山田先生が平井先生とご自身の関係を泉鏡花と鏑木清方になぞらえる形で、清方の「小説家と挿絵画家」という一枚の絵に言及されています。いつか描かれるかもしれないその一枚。四十年をこえる山田先生の画業を俯瞰した今現在の視点から考えれば、ファンとしていつか見てみたいその絵は、実は小野先生と山田先生の出会いの場面かもしれません。)

018) 田中芳樹 「王都炎上 -アルスラーン戦記1」 光文社文庫/2012年
https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334764036
019) 田中芳樹 「暗黒神殿 -アルスラーン戦記12」 光文社文庫/2017年
https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334774707
020) 田中芳樹 「天鳴地動 -アルスラーン戦記14」 光文社文庫/2018年
https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334776848
021) 田中芳樹 「天涯無限 -アルスラーン戦記16」 光文社文庫/2020年
https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334790561
(** 田中芳樹先生の「アルスラーン戦記」シリーズ。山田先生は「光文社文庫版」の各巻で「装画」と「カラー口絵」を描かれています。全16巻完結。ちなみに1巻「王都炎上」の「装画」になっているのは、アルスラーン王子の横顔。芸術新潮の表紙絵の陽子も横顔ですね。国を追われた王子と、異世界を流離する少女。ふたつの横顔には、実はちょっと似たところがあるような気がします。)

022) 竹河聖 「魔界の島 -暗黒竜神Ⅱ」 ハルキ・ノベルス/角川春樹事務所/2004年
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784758420419
(** 竹河聖先生の「海流の中の国々」シリーズ。山田先生はシリーズの第4部「神宝潮流」と第5部「暗黒竜神」の計5巻で「装画」を描かれています。南洋の島々を潮流のように巡る数奇な物語の内容とシンクロするように、いくつかの出版社をまたいで展開された「海流の中の国々」ですが、残念ながら未完。この「魔界の島」で中断してしまっています。タイスクルの旅の行方、またいつか続きを読めるとよいのですが。)

023) 竹河聖 「巡検使カルナー 砂漠神の光輝」 スニーカーブックス/角川書店/1997年
https://bookmeter.com/books/424915
(** 竹河聖先生の「風の大陸」の<銀の時代>を舞台にしたシリーズ。山田先生は「装画」と「カラー口絵」と「モノクロ挿絵」を描かれています。スニーカーブックス「砂漠神の光輝」は、新書版の通算第10巻となるシリーズ完結巻。そしてこの巻に収録された口絵は、おそらく山田先生がはじめてコピックを使用して完成させた一枚ではないかと思われるものです。雑誌「The Sneaker」1994年春号では大特集が組まれるなど、「山田先生といえばカルナー」だった頃もありましたね。この特集の、竹河聖先生といのまたむつみ先生との鼎談「私たち三人の不思議な関係」、今読んでもなかなかおもしろいです。)


<* 講談社ノベルス「ヴォイド・シェイパ」シリーズの奥/上から>

024) Blu-ray 「十二国記 Blu-ray BOX1 月の影 影の海」 ジェネオン・ユニバーサル/2009年
https://www.nbcuni.co.jp/rondorobe/anime/blu-ray/12kokuki/#box1
(** 2009年版のBlu-ray BOXは計4箱。本棚にあるのは1箱目のようです。山田先生は「ジャケット」とスリーブ用のカラーイラストを担当。各BOXに、アニメの後日譚となるドラマCD(脚本は會川昇先生)がついていました。)

025) 「星界物語 箱入り3冊セット」 青心社/1997年
https://www.seishinsha-online.co.jp/cgi-bin/search_s.cgi?KEY=星界物語
(** 山田先生の描き出す荘厳な絵物語。構想では全5巻が予定されていたようなのですが、既刊は3巻まで。星界の現在をもたらしたという、年代記第三紀篇の「大いなる曙のエスラン戦役」は、いまだ描かれぬままです。年代記の続き、断片でもいいのでいつか明らかになると嬉しいのですが。)


<* 新潮文庫「十二国記」シリーズの奥/上から>

026) バーネット 「小公子」 新潮文庫/2020年
https://www.shinchosha.co.jp/book/221405/
(** 小野不由美先生が、雑誌「波」2019年11月号のインタビューで、「小さい泰麒」がその影響を受けていると明かし話題となった「小公子」。2020年に刊行された新潮文庫版は、小野先生が親しんだという「少年少女世界名作文学全集」(小学館/1960年)の川端康成訳を底本にしたもの。山田先生はその「装画」を描かれています。)

027) 奥山景布子 「義時 運命の輪」 集英社文庫/2021年
https://www.shueisha.co.jp/books/items/contents.html?isbn=978-4-08-744322-6
(** 奥山景布子先生の描く「2022年大河ドラマ主人公・北条義時の半生」(帯の惹句より)。平家物語に題をとった「源平六花撰」から、王朝物の「時平の桜、菅公の梅」などを経て、最近は寄席・噺家ものを多く手がけてらっしゃる奥山先生ですが、こんな時代も書かれるんですね。山田先生は、「時平の桜、菅公の梅」のほかに、「源平六花撰」の文春文庫版(2013年)の「装画」を担当されています。そちらでは、なんと山田先生が描く那須与一を見る事ができるのでした。)

028) 森博嗣 「まどろみ消去」 講談社文庫/2000年
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000198764
(** 森博嗣先生が「すべてがFになる」(講談社ノベルス/1996年)でのデビュー後、最初に執筆したという短編集。山田先生が「モノクロ挿絵」を描かれています。挿絵そのものは、1997年刊の講談社ノベルス版と同じもの。「まどろみ消去」のイラストを山田先生が担当するというのは森先生からのご提案だったそうで、「ウェブ日記レプリカの使途」の2000年04月13日付の近況報告など、いくつかのエッセィで、その思い入れを披露されています。ちなみに本棚にあるのは、初版刊行時の「真夏のミステリーズ」の帯がついたもの。)

029) 朝松健 「血と炎の京 -私本・応仁の乱-」 文春文庫/2020年
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167916114
(** 維新期の北海道を舞台にしたウェスタン伝奇時代劇「ノーザントレイル」こと「旋風伝 レラ=シウ」で山田ファンにはお馴染みの、朝松健先生による室町伝奇。「血と炎の京」は、迫力ある筆致で描かれる応仁の乱です。朝松先生の作品で山田先生が「装画」や「挿絵」などを担当したのは、現在は雑誌「獅子王」掲載時のイラストも完全収録された電子版が刊行されている「旋風伝 レラ=シウ」(アドレナライズ/2015年)のほかに、「妖術 太閤殺し」(講談社ノベルス/1995年)、「夢幻組あやかし始末帖 - 百鬼夜行に花吹雪」シリーズ(ベスト時代文庫/2012年)、「魔道コンフィデンシャル」(創土社/2015年)といったところ。筆者個人的には「夢幻組あやかし始末帖 - 百鬼夜行に花吹雪」の2巻「おコン!狐闇」が、いちばん好み。読みながら、ぜひ山田先生にコミカライズしてもらいたいと思ったものでした。また、朝松先生が企画したクトゥルー神話アンソロジー「秘神 -闇の祝祭者たち-」(アスペクトノベルス/1999年)や「秘神界-歴史編-」「秘神界-現代編-」(創元推理文庫/2002年)にも、山田先生がイラストを寄稿されています。「秘神界」英語版1巻の装画は、芸術新潮でも大きく取り上げられていましたね。あれこれ一緒にお仕事されている朝松先生と山田先生ですが、1999年には新宿の「ロフト・プラスワン」で、「伝奇だ!魔界だ!チャンバラだ!トークショーと伝奇ホラー時代劇鑑賞の午後」と題して、おふたりと一緒に伝奇映画を観る、なんて贅沢な企画が催された事も。その際の貴重な記録は、老舗ファンサイト「山田章博 作品目録」に納められていて、朝松先生と山田先生の仲良しな様子をうかがう事ができます。http://hako19980222.g1.xrea.com/akihirob3.html

030) (不明)
(** 書店のブックカバーのかかった文庫本が置かれています。)



< Ⅱ 左棚の中段 > (*左から)

031) 「諸星大二郎 デビュー50周年記念 トリビュート」 河出書房新社/2021年
https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309291628/
(** 山田先生によるトリビュート漫画「暗黒神話 の45年遅い 予告篇 もどき」(モノクロ12ページ)を掲載。漫画作品の発表は「BEASTofEAST-東方眩暈録-」第六十回以来、実に10年ぶりのことでした。)

032) 日向理恵子 「火狩りの王(一) 春ノ火」 ほるぷ出版/2018年
https://www.holp-pub.co.jp/book/b485539.html
033) 日向理恵子 「火狩りの王(二) 影ノ火」 ほるぷ出版/2019年
https://www.holp-pub.co.jp/book/b485396.html
034) 日向理恵子 「火狩りの王(三) 牙ノ火」 ほるぷ出版/2019年
https://www.holp-pub.co.jp/book/b487634.html
035) 日向理恵子 「火狩りの王(四) 星ノ火」 ほるぷ出版/2020年
https://www.holp-pub.co.jp/book/b529239.html
036) 日向理恵子 「火狩りの王 外伝」 ほるぷ出版/2021年
https://www.holp-pub.co.jp/book/b596800.html
(** 「雨降る本屋」シリーズなどの児童書を中心に活躍する日向理恵子先生による、終末世界を舞台にしたSFファンタジーシリーズ。山田先生は「装画」と「モノクロ挿絵」を描かれています。全4巻+外伝で完結。外伝には重要な後日譚も含まれているので、これから読む場合は全5巻だと思って読んでいただいた方がよいかと思われます。なお児童書だと思って読むと、濃厚な描写に驚く場面があるかもしれないので、センシティブなお子様はご注意を。また山田先生の関与のほどはわかりませんが、本作は「WOWOW」でのTVアニメ化が発表されています。そちらも要注目ですね。)

037) 「総特集 高橋葉介」 河出書房新社/2013年
https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309978024/
(** 山田先生によるトリビュートイラスト「クレイジーピエロ」(モノクロ1点)を掲載。2021年には「大増補新版」が刊行されています。ちなみに1998年に刊行されたスコラ漫画文庫シリーズ「夢幻紳士 冒険活劇編(3)」には、山田先生による解説「夢幻紳士異聞」が。こちらは解説というか、ほぼ山田章博が書く小説「夢幻紳士」といった趣きの一篇となっていて、大変に愉快。ぜひ古書店で探してみてくださいね。)

038) 「総特集 諸星大二郎」 河出書房新社/2011年
https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309977638/
(** この「総特集」への参加はありませんが、山田先生もまた古くからの諸星ファンなのでありました。2019年に刊行された「世界伝奇行 パプアニューギニア・マッドメン編」(河出書房新社)の方には、2013年~2014年に開催された「諸星大二郎原画展」用に描かれた、山田先生の手になるトリビュート色紙が掲載されていたりします。)

039) 樋口明雄 「還らざる聖域」 角川春樹事務所/2021年
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784758413817
(** 山田ファンには「白狼(パイラン)伝」や「紅の匣子槍(モーゼル)」シリーズなどの「馬賊もの」でおなじみの樋口明雄先生の作品。2019年には、「南アルプス山岳救助隊K-9」シリーズの一篇「白い標的」(ハルキ文庫版)の「装画」を、山田先生が描かれています。そちらは現代物で、山岳救助犬が大活躍するお話です。)

040) 南條竹則 「ゴーストリイ・フォークロア 17世紀~20世紀初頭の英国怪異譚 角川書店/2020年
https://www.kadokawa.co.jp/product/321902000613/
(** 山田先生の最初の単行本「人魚變生」に解説を寄せ、「BAMBOO HOUSE」収録の「いまはなき王国の王女」や「小説すばる」での連載「書中に女有り」で山田先生とご一緒した南條竹則先生の翻訳作品。「酒仙」で「第5回 日本ファンタジーノベル大賞」の優秀賞を受賞されていますが、南條先生の本職はこちら。近年も精力的に活動されていて、優美な南條訳作品が数多く刊行されています。ちなみに筆者個人的には、集英社新書の一冊として刊行された「英語とは何か」を、とても楽しませていただきました。)

041) 菅浩江 「誰に見しょとて」 ハヤカワSFシリーズJコレクション/早川書房/2013年
https://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/124666.html
(** 2016年に開催された絵本「GEAR Another Day 五色の輪舞」での山田先生との関東・関西サイン会ツアーも思い出深い、菅浩江先生の作品。「五色の輪舞」以外の菅先生の作品では、山田先生は祥伝社文庫版の「鬼女の都」の「装画」も担当されています。また2021年には、菅先生もスタッフに名を連ねる「第59回日本SF大会 『F-CON』 福島大会」用に、山田先生がカラーイラストを提供。プログレスレポートの表紙や大会のイメージイラストとして使われている「福島百鬼夜行図」、なかなか賑やかで楽しい1枚なので、ぜひ一度ご覧くださいね。https://sf-fcon.com/

042) 奥山景布子 「時平の桜、菅公の梅」 中央公論新社/2011年
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784120041983
(** 藤原時平と菅原道真の相克を描く、奥山景布子先生の手になる平安絵巻。山田先生は、2014年に刊行された中公文庫版ともども、本作の華麗な「装画」を担当されています。ちなみに単行本版の装画は、2011年に京都国際マンガミュージアムで開催された「山田章博-世界を生み出す魔法の筆-」展では、「画材の違いを比べよう」というコーナーで、水彩を使用した作品の例として、裏表両面が見られるように宙吊りで展示されていたり。この時使用されていた画材は、「Holbein Artists' Water Colors Set of 30(W407)」だったようです。)

043) 田中芳樹 「白銀騎士団」 光文社/2022年
https://www.kobunsha.com/shelf/book/isbn/9784334914523
(** 田中芳樹先生のお洒落な雰囲気の最新作。ちなみに山田先生は「アルスラーン戦記」以外に、幻冬舎文庫版の「晴れた空から突然に…」(1997年)や創元推理文庫版の「マヴァール年代記」(2002年)、カッパ・ノベルス版の「バルト海の復讐」(2004年)といった、いくつかの単巻ものの田中作品の「装画」も手がけていらっしゃいます。気になる方は探してみてくださいね。)

044) 菊池秀行・牧野修・くしまちみなと 「ダンウィッチの末裔」 The Cthulhu Mythos Files 5/創土社/2013年
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784798830056
(** 創土社の「クトゥルーミュトスファイル」シリーズの一冊。同シリーズでは、山田先生は朝松健先生の「魔道コンフィデンシャル」(2015年)で、「装画」と「モノクロ挿絵」を描かれています。またクトルゥー神話と山田先生というと、青心社の文庫版「クトゥルー」シリーズや、英語版「秘神界」の「装画」を手がけていらしたりと、実はかなりご縁が深いジャンルなのでした。青心社の文庫版「クトゥルー」シリーズは、世代によっては入門書という位置づけになっていた気がするので、「はじめて触れたクトゥルー神話が実は山田先生の装画だった」という方も結構いらっしゃるのではないかと。なお創元推理文庫「秘神界 -歴史編-」では、山田先生がはじめて触れたクトゥルー神話や、お好きな作品についてコメントされていたりして、なかなか興味深いです。)

045) 菊地秀行 「魔界都市ブルース 傀儡人の宴」 ノン・ノベル/祥伝社/2021年
https://www.sun.s-book.net/slib/slib_detail?isbn=9784396210557
(** 菊地秀行先生の人気シリーズ「魔界都市ブルース」の通算第66巻。「ウェスタン武芸帳」や「虚空王」、そして妖美獣ピエール「外道記」でご一緒して、ゴールデンコンビとも謳われた山田先生と菊地先生。山田先生が描く「せんべい屋」というのも、そういえばちょっと見てみたい気はしますね。しかし、何はともあれ「アラバキ」の単行本化が待たれます。)

046) 宮部みゆき 「あんじゅう 三島屋変調百物語事続」 新人物ノベルス/新人物往来社/2012年
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784404041425
047) 宮部みゆき 「魂手形 三島屋変調百物語七之続」 角川書店/2021年
https://www.kadokawa.co.jp/product/322007000501/
(** 宮部みゆき先生の人気怪談シリーズ「三島屋変調百物語」の2巻目と最新刊。宮部先生と山田先生といえばもちろん「ドリームバスター」なのですが、残念ながら2007年に刊行された4巻で中断してしまっています。宮部先生のインタビュー(「SF JAPAN」2003年秋季号掲載)では全7巻予定との事だったので、物語はまだ中間地点という感じなのですが、山田先生描くシェンとマエストロにまた会える日は来るのでしょうか…。なお2021年に新装版に衣替えとなってしまいましたが、角川文庫版「ブレイブストーリー」全3巻の「装画」を、山田先生が担当されていた時期もありました。)


<* 「火狩りの王」の上>

048) 風狸けん/脚本・中川真 「和算に恋した少女1」 ビッグコミックス/小学館/2013年
https://www.shogakukan.co.jp/books/09184868
049) 風狸けん/脚本・中川真 「和算に恋した少女2」 ビッグコミックス/小学館/2014年
https://www.shogakukan.co.jp/books/09185873
050) 風狸けん/脚本・中川真 「和算に恋した少女3」 ビッグコミックス/小学館/2015年
https://www.shogakukan.co.jp/books/09186749
(** 風狸けん先生と山田先生は、山田先生が「人魚變生」で関西同人誌シーンに躍り出た、漫画研究会「ZOO」での活動よりさらに前、大阪経済大学漫画倶楽部「飛行舎」時代からの実に長いおつきあい。作画作業する山田先生の横顔の向こうにちらちら見えるかもしれない、実にいい位置に置かれた「和算に恋した少女」には、おふたりの厚い友情を感じずにはいられません。ちなみに「マーメノイド」の画集では、おふたりのキャラクターデザインの競演を見る事ができたりします。そしてそこには、長いおつきあいだからこそできる、ちょっとした悪戯も。サブキャラクターとして描かれたメイドさん、実は風狸けん先生風のタッチで描かれた山田先生の絵だったりするのでした。)
** 風狸けん先生の公式サイトはこちら。
https://furiken.mangalog.com/



< Ⅲ 左棚の下段 > (*左から)

051) 「ラストコンチネント」 ペーパーコミックス/日本エディターズ/2000年
https://bookmeter.com/books/791818
(** 芸術新潮の記事で、初期の代表作として大きく取り上げられていた「ラストコンチネント」。連載時の惹句は「昭和浪漫空想科学社会派冒険大活劇!!」という実にカッコいいものでした。「SFマンガ競作大全集」の後を継いだ雑誌「WHAT」を、創刊号から牽引するべくはじまった、昭和30年代を舞台にしたこの一大娯楽大作。しかし連載時は「人魚變生」から続く耽美路線からの大胆な絵柄の変更の影響もあってあまり評判を取れず、老舗ファンサイトの掲示板に寄せられた情報によれば、残念ながら内容的には中盤のパートをかなり省略する形で進行する事になってしまっていたようです。本棚に置かれているのは、分厚く全一巻にまとまった2度目の単行本化の際のもの。最新ヴァージョンは、再び二巻組に戻った幻冬舎コミックス版やその電子版ですが、若き日の山田先生がこの作品に投入した熱量は、この単巻版でいちばん感じられる気がします。)

052) 「紅色魔術探偵団」 ノーラコミックス/学研/1989年
https://bookmeter.com/books/516442
(** 小悪魔とドクター・フーと梨華という、山田ファンにはお馴染みの3人組を主人公に据えた摩訶不思議な探偵物語。バラエティに富んだ内容ですが、なかでも「エーリッヒ・ツァンの音楽」を想起させる「怪奇骨董音楽箱」に言及される方が多い気がします。最新版はこちらも幻冬舎コミックス版で、電子版もあります。いつかまた、新作が描かれると嬉しいですね。本棚に置かれているのは、最初に単行本化された際のもの。雑誌「ノーラ」で連載されたわけでもないのに「ノーラコミックス」から刊行されるという、本そのものの刊行経緯も摩訶不思議な一冊です。)

053) 「人魚變生」 マイコミックス/東京三世社/1990~1992年
https://bookmeter.com/books/141368
(** 山田先生の最初の単行本で、代表作中の代表作「人魚變生」を収録した一冊。2022年4月で、なんと刊行から40周年を迎えています。最新版は幻冬舎コミックス版で、こちらも電子版あり。収録作品の由緒書きのようなものを別項で書き散らしていますので、ご興味のある方はそちらをご覧いただければ。「単行本『人魚變生』刊行40周年に寄せて -各作品由緒書き」。なお、本棚に置かれているのはソフトカバー版。1990年から1992年にかけて増刷された5刷から7刷については、ハードカバーではなくこのタイプで刊行されたのでした。)

054) 仁木英之 「大坂将星伝(上)」 星海社FICTIONS/2013年
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784061388499
055) 仁木英之 「大坂将星伝(中)」 星海社FICTIONS/2013年
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784061388567
056) 仁木英之 「大坂将星伝(下)」 星海社FICTIONS/2013年
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784061388574
(** 「僕僕先生」シリーズなどで知られる仁木英之先生が、毛利勝永を主人公に据えて描き出した戦国絵巻。山田先生は「装画」と「登場人物紹介(モノクロ)」を描かれています。「挿絵」はないのが残念ですが、それでも山田先生が描く戦国武将が何人も見られるので、そちら方面がお好きな方はお見逃しなく。)

057) 太田忠司 「鴇色の仮面 新宿少年探偵団」 講談社ノベルス/1998年
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000158244
(** 太田忠司先生の人気シリーズ「新宿少年探偵団」の一冊。おそらくここで注目するべきは、この本棚に置かれた「鴇色の仮面」の刊行と同時に公開された、映画「新宿少年探偵団」でありましょう。1998年に公開された映画「新宿少年探偵団」に際して、山田先生は機械獣シータや一部登場人物のデザインを担当。実写作品に山田先生がたずさわるのは、これがはじめての事でした。この時描かれた設定画などはDVDの特典映像などにもなっていますが、公開当時の大判の「パンフレット」に掲載されたものがお薦めです。なお、太田先生がご自身の作品の主人公「霞田志郎」名義で執筆されたSFミステリー「Trigger -凶星の歌-」(小学館/1999年)では、山田先生が「装画」と「モノクロ挿絵」を描かれていたりもするのでした。)

058) 「ロードス島戦記 ファリスの聖女Ⅱ」 ニュータイプ100%コミックス/角川書店/2001年
https://bookmeter.com/books/7970
059) 「ロードス島戦記 ファリスの聖女Ⅰ 新装版」 ニュータイプ100%コミックス/角川書店/2001年
https://bookmeter.com/books/391497
(** 水野良先生の「ロードス島戦記」の前史を描き出した「ファリスの聖女」。西洋風の幻想世界に命を吹き込んだようなその濃密な描画に、「山田先生の代表作と言えばやっぱりこれ!」と思っていらっしゃる方も多い事でしょう。全2巻ですが、その完結までには紆余曲折あり、かなりの時間を要しています。このためⅡ巻の発売時に、Ⅰ巻も含めて再編成する形で刊行されました。本棚に「ドラゴンコミックス版」のⅠ巻と「ニュータイプ100%コミックス版」のⅡ巻が並んだ写真を時折見かけますが、実はその場合は途中の「86ページ分」が未読のままになってしまっているものと思われます。「何かずいぶん話が飛んだな」と思われていた貴方。そうです、実際に話が飛んでいるのです。現在は2015年に「完全版」が刊行され、その紙版はプレミアム価格になってしまっていますが、電子版がお手頃価格。ぜひ未読の場面をご確認ください。)

060) 「BEASTofEAST-東方眩暈録-1」 バーズコミックス/幻冬舎コミックス/2002年
https://www.gentosha-comics.net/book/b534651.html
061) 「BEASTofEAST-東方眩暈録-2」 バーズコミックス/幻冬舎コミックス/2002年
https://www.gentosha-comics.net/book/b534652.html
062) 「BEASTofEAST-東方眩暈録-3」 バーズコミックス/幻冬舎コミックス/2007年
https://www.gentosha-comics.net/book/b535324.html
063) 「BEASTofEAST-東方眩暈録-4」 バーズコミックス/幻冬舎コミックス/2011年
https://www.gentosha-comics.net/book/b520176.html
(** 山田先生の歌舞伎ファンタジー漫画。岡本綺堂の「玉藻の前」を振り出しに、九尾の狐ものに「将門記」を掛け合わせてしまおうという意欲的な作品です。全5巻と「公式 山田章博」で告知されてから、早10年以上。残り1巻のはずなんですが、掲載誌だった「コミックバーズ」休刊の影響もあってか、実は2011年の第4巻刊行以降、続く物語は1コマも公開されていません(2022年6月現在)。雑誌「月刊京都」2014年2月号に掲載されたインタビューや、2017年に開催された「バーズ20周年記念展」(青山GoFa)で描かれた最終決戦に赴くところとおぼしき鬼王丸のイメージイラストを見る限りでは、続きを描かれるおつもりは十分にありそうなのですが…。ともかく、このまま未完に終わらないよう、祈るばかりです。一応続編掲載の可能性があるのは「コミックバーズ」を引き継いだWEBマンガサイト「comicブースト」ですので、「続きを読みたい!」と思わん方は、編集部にファンレターで嘆願いたしましょう。)

064) 「カフェ・ド・マキニカリス」 マイコミックス/東京三世社/1985年
https://bookmeter.com/books/4879914
(** 山田先生の短編漫画をまとめたものとしては3冊目の作品集。タイトルになっている「カフェ・ド・マキニカリス」を舞台にした作品「踊る花」が収録されていないのが、実はちょっと興味深い一冊です。現在は「小悪魔もの」を除く諸作品が、2016年に幻冬舎コミックスから刊行された「機巧亭茶館(からくりていちゃかん)」に、再編集されてまとめられています。「機巧亭茶館」の英文タイトルは「CAFE DE MAQUINICALIS」なんですが、内容は「カフェ・ド・マキニカリス」と同じものではないのでご注意を。)

065) 「BOMBOO HOUSE」 マイコミックス/東京三世社/1983年
https://bookmeter.com/books/4713804
(** 山田先生の短編漫画をまとめたものとしては2冊目の作品集。初版帯には「円盤空を飛び、フラミンゴ巨大化す、世はなべて事もなし。人は宇宙人などと関わりを持たぬ方がよろし。/華麗なる筆使いで80年代を切り拓く"墨の魔術師"山田章博のセカンド・コミック」というなんとも趣深い惹句が。こちらも「カフェ・ド・マキニカリス」同様、旧版の単行本そのままの復刊はされておらず、「小悪魔もの」以外の2作品が「機巧亭茶館(からくりていちゃかん)」に収録という状態になっています。)

066) 「百花庭園の悲劇」 青心社/1991年
https://www.seishinsha-online.co.jp/cgi-bin/search_s.cgi?KEY=百花庭園の悲劇
(** 山田先生の初連載漫画作品。雑誌「グレープフルーツ」での連載で、最初の単行本は新書館から刊行されていました。本棚に置かれているのは青心社版で、二度目に単行本化された際のものです。さて青心社版の「百花庭園の悲劇」といえば、やはり描き下ろしのサイドストーリー「マイペンライ」。亜熱帯の雰囲気と山田先生のしっとりした描画が雰囲気よくまとまったこの短編、お好きな作品として挙げる方が多いように思われます。「パッタイ」という料理をこの作品ではじめて知った、という声もよく見かけますね。もちろんそんな「マイペンライ」も収録して、現在は幻冬舎コミックスから復刊されていますので、これから読むという方はぜひそちらを。電子版も用意されています。)

067) 「おぼろ探偵帖」 ペーパーコミックス/日本エディターズ/1999年
https://bookmeter.com/books/367743
(** 芸術新潮掲載の十問十答で小野先生が繰り返し読まれていた事がわかり、にわかに注目の集まった感のある「おぼろ探偵帖」。夜雀と狸穴法師とお百の3人組を主役に据えた怪異譚で、本棚にあるのは二度目の単行本化の際のものです。この時は、それまで未収録となっていた「始末記」と初期設定資料集「おぼろ雑草帖」、そして自作解説の「おぼろ雑想帖・解題」が加わっています。最新の幻冬舎コミックス版でも、これと同じ構成。「解題」では鏑木清方の描いた「築地川」の話題から、いまだ描かれざる「おぼろ探偵帖」の一作の作品構想が語られていたりしますが、「紅色魔術探偵団」同様、こちらもいつか続編が描かれることを願ってやみません。)

068) 「魔法使いの弟子 ~悪魔に「小」がつくいくつかの事情 ベルコミックス/フロム出版/1994年
https://bookmeter.com/books/60450
(** 小悪魔といえば山田作品には欠かせない名優ですが、こちらは東京三世社刊のマイコミックスの各巻からいわゆる「小悪魔もの」だけを取り出してまとめたという一冊。小悪魔好きの紳士淑女の皆様向けには「これだけあれば大丈夫」という素敵な作品集です。しかし近年の幻冬舎コミックスでの復刊のラインナップからは外れてしまっており、結果的に「新刊では小悪魔ものだけが読めない」という状態になってしまっているのでした。その不幸ぶりが小悪魔くんらしいといえばそうなのですが、「BAMBOO HOUSE」や「多麻能美須麻流」といった山田先生の代表作にあたる作品群が抜け落ちてしまっているのは残念なので、そろそろこちらも復刊をお願いしたいところですね。)

069) 「ボーナス・トラック」 ペーパーコミックス/日本エディターズ/1999年
https://bookmeter.com/books/618789
(** 1999年から「山田章博全集」の刊行を標榜してスタートした日本エディターズの単行本群。当時の単行本未収録作品を集成した「ボーナス・トラック」は、その中では唯一の、新たに編まれた作品集でした。現在では、その収録作品のほとんどが幻冬舎コミックスの「機巧亭茶館」に収められています。しかし、いまもなお単行本未収録となっている山田先生の漫画作品は、わかっているだけでも「ボーナス・トラックⅡ」を編める程度のページ数は存在しているはず。そちらも、いつかは単行本化をお願いしたいところ。いや、昨今の流れでいえば、もはや電子版の単品販売でもいいのではとは思はなくもありませんが、やはり本の形で編まれたもので読みたいです。)

070) カイラ・クリューバー 「レガシーⅠ」 WAVE出版/2010年
https://www.wave-publishers.co.jp/books/9784872904864/
071) カイラ・クリューバー 「レガシーⅡ」 WAVE出版/2011年
https://www.wave-publishers.co.jp/books/9784872905113/
(** 海外作家の翻訳もののイラストも数多く手がけられている山田先生。極めてエレガントな「レガシーⅠ」の「装画」は、胃潰瘍の手術で何度かお腹を切ったり縫ったりされた後、ようやく落ち着いたかなという時期に描かれたものでした。ちなみにこの絵は、2011年に京都国際マンガミュージアムで開催された「山田章博-世界を生み出す魔法の筆-」展では、「画材の違いを比べよう」というコーナーで、コピックを使用した作品の例として、裏表両面が見られるように宙吊りで展示されていたり。そう。この絵の彩色もまた、コピックなんですよね。https://twitpic.com/4qen93 写真は京都MMのtwitterで紹介された展示の様子。左奥にぶら下がっているのが「レガシーⅠ」で、その隣にあるのは水彩の例となっていた「時平の桜、菅公の梅」です。)



< Ⅳ 右棚の左側上段 > (*左から)

072) 雑誌「漢聲雑誌78期 搶救龍潭聖蹟亭」 漢聲雑誌社/1995年
https://nostos.jp/archives/259133
(** 「漢聲(ハンシェン)」は、台湾の出版社から出版されている中国の伝統文化を紹介する雑誌。本棚にあったのは、その中でも台湾・桃園市の史跡「龍潭聖蹟亭」を取り上げた号のようです。世界は広い。こんな雑誌があるんですねえ。ちなみにこれは独力では本棚の文字が読み取れず、筆者の家人に解析してもらいようやく確認された一冊なのでした。)

073) 高橋葉介 「にぎやかな悪夢」 河出書房新社/2021年
https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309728520/
(** 昨年刊行された高橋葉介先生の初画集。高橋先生は「マンガ少年」1977年8月号でデビュー。山田先生はその頃、大坂経済大学漫画倶楽部「飛行舎」の立ち上げに参画といった頃でした。同人誌「ZOO」Vol.4(1980年)の座談会には、山田先生が「マンガ少年」へ投稿した際に「高橋葉介と松本零士と山田ミネ子と岡田史子を足して均等にした感じ」と編集部から言われてしまったというエピソードが。たまたまその時期、似た絵柄の作品も描いていらしたため、同じような絵柄の作家とくくられてしまったという事なんですが、「総特集 高橋葉介」寄稿の山田先生の手になるトリビュートイラストに添えられたコメントには、先行してプロデビューを果たした先達への羨望のようなものが、少しに滲んでいるようにも思われます。そんな因縁浅からぬ(?)おふたりですが、実は同じ作品に関わった事が。それは、TRPG「白狼伝 RPG スーパーマジカルチャイナ」。雑誌「ログアウト」をベースに展開されたこのTRPGでは、リプレイが掲載された雑誌連載のイラストを高橋先生が担当し、パッケージアートと小説版のイラストを山田先生が担当する予定でした。しかし雑誌連載が順調に進行し、樋口明雄先生による小説版「赤い夕陽の快男児」(ログアウト冒険文庫/1993年)が刊行され、1994年5月にはプレリリースイベントまで開催されたものの、結局TRPG本体は発売されないまま現在に至ります。なかなか何もかもはうまくいかないものですが、「山田章博・高橋葉介両先生の素晴らしいグラフィックの数々が掲載される予定」なんて記事が「ログアウト」1994年8月号に掲載されていたりもしたので、残念無念なのでした。)

074) 「写真集 懐かしの上海」 国書刊行会/1984年または1995年
https://www.kokusho.co.jp/np/isbn/9784336017550/

075) 三井純夫 「7000年の記憶 屋久島」 南日本新聞社/1994年
https://bookmeter.com/books/269090
076) 雑誌 「山と渓谷」2022年4月号 特集:日本アルプス自然誌ガイド
https://www.yamakei.co.jp/products/2821901569.html
077) 雑誌 「山と渓谷」2022年3月号 特集:山ごはん大全
https://www.yamakei.co.jp/products/2821901568.html
(** 「山と渓谷」2022年4月号は日本アルプス特集だったのですが、巻頭には「十二国記」の世界を思い起こさせるような中国・黄山の写真が数点掲載されていて、なかなか雄大。それにしても山田先生、登山の趣味がおありだったかしら?と、やや首を傾げながら確認していたところ、「山と渓谷」2022年3月号には、樋口明雄先生の小説「屋久島トワイライト」の最終話が掲載されていました。むむむ? *** と思っていたら、2022年08月刊行の単行本版「屋久島トワイライト」の装画を、山田先生が担当される事になったのでした。https://www.yamakei.co.jp/products/2822156070.html

078) 「日本伝奇伝説大事典」 角川書店/1986年
https://www.kadokawa.co.jp/product/199999031300/
https://www.kosho.or.jp/products/catalog_detail.php?nh_id=1692749
(** 帯の惹句は「全国各地に伝わる、神話・伝説・昔話・説話・奇談・人物の逸話などを集大成した総合的な伝承文芸大事典」。A4判で1000ページオーバーという分厚い1冊で、定価は25,000円(税抜)です。サイズやお値段にのけぞってしまいますが、しかし山田先生のお仕事には確実にお役に立っていそうです。 *** と、ドキドキしていましたが、初版時は9,800円だったそうで、もともとはそこまで高価な本ではなかったようです。)

079) 奈良行博 「道教聖地 中国大陸踏査記録」 平河出版社/1998年
https://www.amazon.co.jp/dp/4892033014
(** 道教と言えば「白銀の墟 玄の月」で重要な役割を果たしていましたね。本棚に収められたこの一冊、ちょっとお値段は高めですが、「作中に登場した道観などの具体的な様子を知りたい!」といった研究熱心な向きには、格好の資料になりそうです。豊富な現地の写真が見られるだけでなく、巻頭には道教についてのあらましも掲載されていて、「そもそも道教とは?」という方への入門書としてもお薦めかと。)

080) 「AERA MOOK 民俗学がわかる。」 朝日新聞出版/1997年
https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=4295
(** 1997年当時の「民俗学」をめぐる論考や論説を中心に編まれた文章中心のムック本で、グラフィカルな内容が多い資料系の本の中ではやや特異な一冊。筑摩書房刊「柳田國男全集」の刊行開始にあわせた特集本だったようで、ざっと目を通した限りでは、「民俗学」の生みの親である柳田を乗り越えていこうとする、当時の気鋭の研究者諸氏による批判的な論説が目立つように思われました。本棚の中で、この本が「道教」と「山海教」の図版の間に配置された意図は、門外漢には掴みかねますが、山田先生が気に止められている何かが、この本のどこかに秘められているのでしょうね。)

081) 馬昌儀 「古本山海經圖說(上)」 廣西師範大學出版社/2007年
082) 馬昌儀 「古本山海經圖說(下)」 廣西師範大學出版社/2007年
https://www.books.com.tw/products/CN10095000
(** 明・清代の様々な「山海経」の図版を収集し、そこに登場する妖怪や神々を整理して比較できるように配置した本格的な図鑑。本棚にあったのは立派な箱に入った中国の大学出版社刊のものですが、2009年には台湾の蓋亞文化という出版社から、普通のご家庭にも置きやすい普及版が刊行されているようです。)

083) 「トールキン指輪物語事典」 原書房/1994年
http://www.harashobo.co.jp/book/b367396.html
(** 本棚にあったのは菊判サイズの立派なものですが、ちょっと小さな普及版(軽装版)も刊行されています。)

084) 東雅夫 編 「怪獣文藝の逆襲」 角川書店/2015年
https://www.kadokawa.co.jp/product/321408000161/
(** やはり「怪獣もの」お好きなのですねえ。)

085) (不明)
(** はじっこにB5判ぐらいのサイズの冊子が置かれているように見えるのですが、タイトルなどの判別はできませんでした。背表紙の色は白。)

086) (不明)
(** はじっこにB5判ぐらいのサイズの冊子が置かれているように見えるのですが、タイトルなどの判別はできませんでした。背表紙の色は黒。)



< Ⅴ 右棚の左側下段 > (*左から)

087) DVD 「SHINOBI プレミアム・エディション」 松竹/2006年
https://www.shochiku-home-enta.com/c/japanese/DA0891
(** 山田先生がコンセプトデザインを担当した映画「SHINOBI -HEART UNDER BLADE-」(2005年)のDVD4枚組セット。本編以外での見所は「甲賀特典ディスク」収録の甲賀・卍谷の里のセット制作場面で、山田先生のデザインを再現するために、美術班が悪戦苦闘する様子が垣間見れます。一方の伊賀鍔隠れの里の方は、岩手県の名勝・猊鼻渓にセットが組まれたようなんですが、竿一本で船頭さんが操る舟下りの舟を使って資材を運んだのだとか。せっかくなのでそちらのメイキングもあわせて見てみたかったものですが、残念ながら特典映像には収録されていません。それはともかく、山田先生が「SHINOBI」用に描いた絵の多くは「『SHINOBI』コンセプトデザイン画集」(講談社/2005年)に収録されていますので、ご存じない方はこの貴重な記録をぜひご一読くださいね。また、すでに公開が終了しているのでご紹介するのはちょっと躊躇われますが、筆者の個人的に思い入れが深いのは、映画公開時に読売新聞系のサイト「YOLシネマスペシャル」に掲載された「4年間の苦闘の痕跡 付箋だらけの『甲賀忍法帖』」という寄稿文。本作への並々ならぬ想いが滲む一文で、山田先生の手になるものの中でも特に好きな文章のひとつです。)

088) DVD 「WOLF'S RAIN DVD-BOX」 バンダイビジュアル/2008年
https://tower.jp/item/2386640/WOLF%27S-RAIN-DVD-BOX<初回生産限定版>
(** 作中に登場する「月の書」という本を、山田先生がデザインしていたアニメ「WOLF'S RAIN」。このDVD-BOXは、その「月の書」の装幀をベースにパッケージングされたものだったのですが、この頃の山田先生はオブジェクトのダメージ表現に微妙なこだわりが。そのあまりの巧みさに、手元に届いたこのDVD-BOXを開封した筆者は「あれ!?どこかで水に濡れちゃった!?」と本気で慌てたものでした。ほかにも2004年版の「十二国記カレンダー」の表紙では、「年代物の絵」という雰囲気を出すために、「完成した絵を無造作に丸めて実際に傷をつける」という恐ろしい荒技を繰り出されたこともありましたね。青山GoFaで開催された「十二国記画集刊行記念『山田章博展』Exhibition & Cafe」(2014年)で実物を拝見する機会がありましたが、やはりぎょっとしながら眺めたものでした。そちらは画集「久遠の庭」の99ページに収録されていますので、山田先生の飽くなき探求の痕跡をぜひご確認あれ。)

089) Blu-ray 「十二国記 Blu-ray BOX」 NBCユニバーサル/2015年
https://db2.nbcuni.co.jp/contents/hp0003/list.php?CNo=3&AgentProCon=26273
(** こちらは全話収録で1BOXという形態で発売されたバージョン。最初のDVDが全19巻だった事を思えば、ずいぶんコンパクトになりました。そういえば、芸術新潮に少しだけ収録された、山田先生が手がけたアニメ版の設定資料は「十二国記 公式アニメガイド」(講談社/2004年)にみっしりと掲載されていますので、「見たことがない!」という向きはぜひお探しあれ。またTV放映時に開催された「十二国記の世界展」や、山田先生の高知と京都での原画展では、アニメ版の設定資料の一部が展示され拝見できる機会がありました。アニメガイドと原画展示でこれまでに紹介されているだけでも、その設定資料画の枚数は確かにかなり膨大なもの。しかし會川昇先生による「十二国記 アニメ脚本集」(講談社X文庫ホワイトハート/2002年~2004年)を読むと、3巻の第十五話の注釈では泰麒の蓬莱での弟にあたる高里卓について「暗い美少年をイメージしていたが、山田章博氏のキャラクター原案では、より親しみやすい雰囲気に」とあったり、4巻の第三十話の注釈で昇鉱について「山田章博さんには数度にわたってキャラクター原案の稿を重ねていただき」とあったり、また5巻の監督インタビューに「お城に関しては山田章博さんに相談して、イメージイラストを描いていただきました」とあるなど、アニメ制作用に描かれ一般に公開されていない絵は、まだまだたくさん存在しているようです。さらに「脚本集」3巻の第十二話の注釈では、アニメ版が当初全七十八話予定であった事、実質的な最終章となっている「東の海神 西の滄海」に続いて、「図南の翼」と「黄昏の岸 暁の天」さらに当時はまだ執筆されていなかったその続き(「白銀の墟 玄の月」ですね)までが制作される構想であった事が記されています。脚本に多少先行してキャラクター原案の作業が進んでいた可能性も勘案すると、ちょっと気が遠くなりますね。当時を思い起こして、「僕じゃない誰かがやっていたのかも」と芸術新潮のインタビューで告白されていた山田先生、アニメ十二国記の作業、本当にお疲れ様でした。)

090) DVD 「帝都封印 DVD-BOX」 東芝デジタルフロンティア/2000年
https://www.suruga-ya.jp/product/detail/134000123
(** 映画「帝都物語」(1988年)と映画「帝都大戦」(1989年)、そして両作のメイキングの3枚セットのDVD-BOX。おそらく山田先生は制作に参加はされていないはずなので、この本棚のこの位置に置かれているのは、単にお好きなだけなのか、あるいは何かの資料にされているのか、ちょっと判断に迷うところです。)

091) 「仮面ライダー鎧武 ザ・ガイド」 星海社/2014年
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784062189101
(** 山田先生がクリーチャーデザインで参加した、「仮面ライダー鎧武」のTV放映途中に刊行された1冊。ビャッコインベスのデザイン画が、ここではじめて印刷物に収録されました。山田先生へのインタビューも掲載されています。そのインタビューによれば、このお仕事は出渕裕先生からのご紹介によるものだったのでした。なお鎧武のために描かれたデザイン画は、その多くが「仮面ライダー鎧武/ガイム公式完全読本」(ホビージャパン/2014年)や「平成仮面ライダー怪人デザイン大鑑/完全超悪」(ホビージャパン/2020年)に収録されています。気になる方は、ぜひそちらをご確認くださいね。また実際の劇中では、第40話「オーバーロードへの目覚め」にて、山田先生デザインのインベスたちが勢揃い。その勇姿を堪能することができます。)

092) 「西遊記完全攻略マニュアル」 光栄/1999年
https://bookmeter.com/books/611394
(** 山田先生がキャラクターデザインを担当した、プレイステーション用ソフト「西遊記」の攻略本。単なる攻略本と思うなかれ。これは、各キャラクターの彩色版の設定イラストが掲載されているだけでなく、山田先生へのインタビューや、多数の初期設定画稿、綴じ込みポスターなども収録した、プチ「山田章博の世界」とも言える一冊なのです。オススメです。ちなみに本書のインタビューに添えられた近影は、気に入られているのか、その後よく使われている一枚なのでした。なお「西遊記」の攻略本には「公式西遊記大全~完全制覇之書~」(アスペクト/1999年)もありますが、そちらは「装画」こそ描き下ろしとなっているものの、内容の方では山田絵は控え目。本気の攻略目的の方向け、という雰囲気になっています。)

093) 韓国語版 「アルスラーン戦記8」 /2015年
http://www.yes24.com/product/goods/22493416
(** 韓国で刊行された、光文社文庫版仕様の「アルスラーン戦記」。日本の文庫サイズではなく、新書のようなサイズで刊行されているので、山田先生の「装画」や「口絵」もちょっと大きなサイズで楽しむ事ができます。アニメ版の放映に合わせて刊行されたものらしく、第1部全7巻のBOXにはアニメのガイドブックがセットになっています。あちらのネット書店を確認する限りでは、刊行は本棚にある8巻まででストップしている状態のようでちょっと残念。)

094) ドイツ語版 「ロードス島戦記 ファリスの聖女Ⅱ」 CARLSEN COMICS/2005年/ RECORD OF LODOSS WAR Lady von Pharis
https://www.amazon.co.jp/dp/3551761841
095) ドイツ語版 「ロードス島戦記 ファリスの聖女Ⅰ 新装版」 CARLSEN COMICS/2005年/ RECORD OF LODOSS WAR Lady von Pharis
https://www.amazon.co.jp/dp/3551761833
(** 海外版の多い「ファリスの聖女」ですが、これはハンブルグの出版社が刊行したドイツ版。ドイツでは「ドラゴンコミックス版」にあたるものは刊行されていないようなので、Ⅰ巻を新装版と表記すべきか悩むところですが、「ニュータイプ100%コミックス版」の翻訳という意味で一応付けておくことにいたしましょうか。漫画の翻訳には色々なパターンがありますが、このCARLSEN COMICS版では擬音は日本版のままです。00年代半ばに刊行されたもので、OTAKUカルチャーの浸透とともに、よりオリジナル版を生かした雰囲気が好まれるような風潮があったのかもしれません(表紙にも「ロードス島戦記」という日本語が組み込まれていたりしますし)。海外版、色々なお国柄や流行が垣間見えてなかなか面白いものです。なおAmazonなどでⅡ巻の書影とされているものは、発売前に仮に登録されたものがそのまま掲載され続けているもの。実際には、日本語版と同じく魔神王が表紙を飾っています。)



< Ⅵ 右棚の右側の棚上 >

096) 「THE NEXT GENERATION パトレイバー 98式イングラム (1/33 完成品フィギュア) スター・チャンネル/2014年
https://www.amiami.jp/top/detail/detail?gcode=FIGURE-031266-R
(** 棚の上に置かれたこのイングラムは、実写版プロジェクト「THE NEXT GENERATION パトレイバー」放映時にキャンペーン応募者に届けられたもの。山田先生と「パトレイバー」の接点とは?としばし悩み、毎年山田詣をされるという出渕裕先生か、「火狩りの王」で脚本を担当される押井守監督からの贈り物かしら?とも思ったりもしたのですが、「THE NEXT GENERATION パトレイバー」のあれこれを確認すると、映画「ラブ&ピース」(2015年)のイメージイラストを山田先生に依頼したという、田口清隆監督のお名前が(「ウルトラマンZ」でのご活躍が記憶に新しいですね)。するとそちらからのご縁で贈られたものか、それともあるいは単純に、作中の「大怪獣現わる」の回を視聴するついでに、スター・チャンネルの「THE NEXT GENERATION パトレイバーシリーズ全7章コンプリートキャンペーン」に山田先生ご自身が応募されたのか…調べていくほど、謎は深まるばかりなのでありました。)



< Ⅶ 右棚の右側 >

≪ Ⅶ-1 左側上段 ≫ (*左から)

097) 森脇真末味 「男は寡黙なバーテンダー」 新書館/1985年
https://www.suruga-ya.jp/product/detail/504019922
(** 漫画研究会「ZOO」の頃からの長いおつきあいの森脇真末味先生の1冊。「男は寡黙なバーテンダー」は、山田先生がアシスタントに入られていた「おんなのこ物語」と世界観・キャラクターを共有する作品ですが、こちらもなんというか、本棚の実にいい所に置かれていますね。いにしえの同人誌「ZOO」Vol.5(1981年)などを紐解きますと、その巻末には山田先生原案の衣装を身につけたキャラクターを森脇先生が描く「マスターのお洒落専科」なんてものが。これ自体はお遊び風ではありますが、「おんなのこ物語」でお洒落な男性キャラクターの衣装を検討するのにあたって「テーラーの息子に教えを請うた」と森脇先生が記されていたりするので(中公愛蔵版1巻巻末の「スケッチブック」より)、実はこのあたりが山田先生のキャラクターデザイナーとしてのキャリアの端緒に位置づけられそうな気もします。一般の雑誌では、森脇先生と山田先生の対談が「山田章博&ひさうちみちお大全集」と「SFマンガ競作大全集」PART24(1984年刊)に続けて掲載されていて、こちらもなかなか興味深いものが。また森脇先生のところでアシスタントをされていた頃の現場の雰囲気は、同じく長期アシスタントに入られていた竜巻竜次先生の漫画「実録森脇真末味 君よ!愛に生きて!!」(「ぱふ」1981年12月号)で、楽しく拝見する事ができます。どれも古い雑誌などですが、気になる方は探してみてくださいませ。)

098) 士朗正宗 「コミックガイア版 アップルシード 総集編」 青心社/1996年
https://www.suruga-ya.jp/product/detail/504009971
(** 直接的な交友関係はあまり聞き及びませんが、ともに70年代後半~80年代初頭の関西同人誌シーンで活躍された山田先生と士朗先生。もちろんお互いにまったくご存じないというわけではないのでしょう。山田先生が体調を崩された時期の刊行となった青心社の文庫版「クトゥルー11」(1998年)では、士朗先生がピンチヒッター的に装画を担当されていたりします。本棚にあるのは、青心社から刊行されていた雑誌「コミックガイア」に連載された、「アップルシード」第5巻にあたるエピソードの途中までがまとまった一冊。のちに「アップルシード ハイパーノート」としても刊行されています。ちなみにこの「総集編」収録のアップルシード連載中の「コミックガイア」No.10(1992年)の巻頭には、山田先生のコミカルな平安絵巻「鵺」が。こちらは単行本未収録のままなので、いつかどこかに収録されるといいのですが。)

099) 「【決定版】図説・日本刀大全」 歴史群像シリーズ特別編集/学研/2006年
https://one-publishing.co.jp/books/9784651200408/
(** 最近では山田先生描く「日本刀」は、森博嗣先生の「ヴォイド・シェイパ」シリーズ(講談社ノベルス/2021年)や、楠木誠一郎先生の「新選組」(講談社火の鳥伝記文庫(のちに青い鳥文庫)/2018年)などに登場していますね。)

100) 「【決定版】図説・中国武器集成」 歴史群像シリーズ特別編集/学研/2006年
https://hon.gakken.jp/book/1860443100
(** もちろん「十二国記」シリーズにも数々の中国系の武器が登場するわけですが、2008年~2011年にかけて山田先生が「装画」と「挿絵」を手がけた、小沢章友先生の「三国志」シリーズ(講談社青い鳥文庫)でも、本棚のこのあたりの本は資料として大活躍していそうです。なお、直近で山田先生が中国系の武器を描かれているのは、千葉ともこ先生の安史の乱の頃の唐を舞台にした武侠小説「戴天」(文藝春秋/2022年)と「震雷の人」(文春文庫/2022年)。この2冊は発売されたところですので、ぜひ新鮮なうちにお手元に。)

101) DVD 「大怪獣東京に現わる」 ビームエンタテインメント/2000年
https://www.suruga-ya.jp/product/detail/134000078
(** わりあい整然とした本棚の中で、このあたりだけ微妙に雑然と置かれているように見えますが、こちらは桃井かおりさん主演の、怪獣が出てこない事で有名な怪獣映画のDVD。やはり「怪獣もの」お好きなのですねえ。という事なのか、それとも実は何かの資料だったりするのか……えーっと、えーっと……「アラバキ」お待ち申し上げておりますです。はい。)



≪ Ⅶ-2 左側下段 ≫ (*左から)

102) TRPG 「メガトラベラー スタートセット」 ホビージャパン/1990年
https://www.suruga-ya.jp/product/detail/607509364
(** TRPG「メガトラベラー」は、山田先生が描く「スペースオペラ」風のイラストが堪能できる貴重な作品のひとつ。本棚に置かれているのは、「プレイヤーズ・マニュアル」「レフリーズ・マニュアル」「帝国百科」の3冊がBOXに収まった「スタートセット」です。この3冊を並べるとなかなか壮大なパノラマになりますので、お持ちの方はお試しあれ。シリーズはその後「反乱軍ソースブック」「ナイトフォール」「ハードタイムス」と続き、それらの「装画」も山田先生が手がけています。)

103) 「地図で訪ねる歴史の舞台-日本-最新版」 帝国書院/1999年
https://www.e-hon.ne.jp/bec/SA/Detail?refShinCode=0100000000000030503246&Action_id=121&Action_id=121&Sza_id=HH
(** 学生時代に多くの方が「地図」の教科書でお世話になったであろう帝国書院さんの人気シリーズ「旅に出たくなる地図」の一冊。2022年現在の最新版は2016年刊の「8版」なのですが、本棚に置かれていたのはどうやら1999年版の「最新版」のようです。 ** うっかり取り寄せてみました。およそ20年前の刊行なので、考古学や歴史研究の進展の結果として情報の更新が必要なところもあるのでしょうが、現代の地図上によく知られた歴史の舞台が重ねて記された本書、たいへん興味深いです。山田先生の絵の中に具体的に描き込まれる事はあまりないように思いますが、歴史物の挿絵などを手がけられる際、物語の舞台の具体的な位置を確認されていたりするのでしょうね。)

104) 「PROCESS : architecture 116」 プロセス・アーキテクチュア/1994年/ Kyoto It's Cityscape Traditions and Heritage 京の都市意匠-景観形成の伝統
https://hamonika-koshoten.com/?pid=44094509
(** 古都京都の景観・町並みの歴史をたどり、1994年当時の京都の「景観遺産」が紹介された特集本。著者は、立命館大学の建築都市デザイン学科 歴史・修景研究室の山崎正史教授。けっこう専門的な内容のはずなんですが、京都観光の目的地だけではなく、そこに至る町並みがたくさん紹介されていて、眺めていると旅に出た気になれる楽しい一冊でした。本棚にあったのはソフトカバー版ですが、ハードカバーのSpecial版も存在しています。)

105) 風俗博物館 編 「源氏物語 六條院の生活」 光琳社出版/1998年
https://hamonika-koshoten.com/?pid=53438989
(** 「源氏物語」に登場する風俗・建築・装束などが、4分の1サイズで再現された「六條院」とそこに配された人形を用いて解説されるという、実に作画資料向きと思われる一冊。1999年には青幻舎から改訂版が刊行されています。)

106) 李墨 編 「京劇資料展」 早稲田大学坪内博士記念演劇博物館/2005年
https://hamonika-koshoten.com/?pid=91721516
(** 早稲田大学の演劇博物館で2005年9月~10月に開催された「京劇資料展」の図録。「京劇資料展」は、坪内逍遙以来収集が続けられ、特に衣装では中国国外の京劇コレクションとしては屈指の所蔵を持つという演劇博物館の資料を用いた展覧会で、直接的な京劇の舞台の衣装・小道具などから、番付、舞台風景が刷られた版画や関連出版物、さらには民芸品まで、京劇にまつわる多角的な資料を展示するという意欲的なものだったようです。図録の中では「京劇劇場模型」の写真が、筆者個人的には興味をそそられるものでした。)

107) 王抗生 「中國瑞獸圖案」 萬里機構(萬里書店)/2001年
http://www.wanlibk.com/cgi-bin/isbn_pages.asp?txtIsbn=9621417947
(** 王抗生先生による「中國瑞獸圖案」は1990年にも南天書局から刊行されていますが、こちらはおそらくその新装版で、香港の出版社・萬里機構の「中國傳統圖案系列」の一冊。シリーズ全体の構成としては、1)中國龍紋圖案、2)中國鳳紋圖案、3)中國花卉圖案、4)中國花邊圖案、5)中國佛教圖案、6)中國仕女圖案、7)中國瑞獸圖案、8)中國十二生肖圖案となっているようで、全巻揃えるとかなり中国の図案に詳しくなれそうですね。)

108) (不明)
(** 薄い冊子が置かれているのですが、タイトルなどの判別はできませんでした。)



≪ Ⅶ-3 右側上段 ≫ (*左から)

109) 「山田章博画集(軽装版)」 中央公論新社/2004年
https://bookmeter.com/books/60441
(** 「百華繚乱/山田章博の20年にわたる変幻自在なアートワーク/その軌跡を見はるかす、初の本格的イラスト画集」という惹句に違わぬ、小説の装画・挿絵を中心とした画集(ちなみに「百華繚乱」は画集のタイトルではありません…)。80年代~90年代に描かれた作品が、文字通りみっしり詰まっています。本棚にあるのはその軽装版。どちらかというと光沢感のある紙の使われたこちらの方が、新書や文庫のカバーに使われる素材に近い雰囲気。特に「装画」として描かれた作品については、この軽装版で鑑賞した方が、書店で書影を見かけた時のイメージに近いかもしれません。ここからさらに20年、山田先生の絵はまだまだ描き続けられています。00年代~10年代をまとめた画集も、そろそろ企画されると嬉しいのですが。)

110) 「十二国記画集 第一集 久遠の庭」 新潮社/2014年
https://www.shinchosha.co.jp/book/335931/
(** 講談社X文庫ホワイトハート版の「十二国記」シリーズのイラストを中心に集成された画集。残念ながらシリーズ途中「Skies of Dawn(風の万里 黎明の空)」までで刊行が終わってしまった、TOKYO POP版(英語版)用に描き下ろされていた「装画」もすべて収録されているのが嬉しい一冊。第二集「青陽の曲」も、ついに発売される事が発表されました。2014年にはすでにタイトルが決まっていたので、実に8年越しでの待望の刊行です。そちらは新潮文庫版のイラストがまとまった画集になるとか。9月が待ち遠しいですね。)

111) 「山田章博の世界 ~ミスティックアーク アートワークス~」 ソフトバンク/2000年
https://bookmeter.com/books/522310
(** 本家「山田章博の世界」の第1集。「綺麗な絵、あります。」の惹句にたがわぬ画集で、スーパーファミコン用ソフト「ミスティックアーク」(エニックス/1995年)とプレイステーション用ソフト「ミスティックアーク まぼろし劇場」(エニックス/1999年)にまつわるイラストや設定資料が集成されています。巻末には山田先生が書いた「まぼろし劇場」の「企画書」まで掲載されていて、ただ「綺麗な絵」だけでは終わらない、実に資料的な価値の高い一冊です。)

112) 「山田章博の世界 ~ファンタジー アートワークス~」 ソフトバンク/2005年
https://bookmeter.com/books/361930
(** 本家「山田章博の世界」の第3集。こちらは「山田章博が描き続けた、ファンタジー世界の集大成!」という惹句で、ゲームやファンタジー関連のイラストが集成されています。この画集の巻頭に置かれた「胎動」は、雑誌「The Sneaker」1995年春号(1995年3月5日発売)に掲載された創刊2周年イラスト競作企画「Visual Illusion Special」の一枚で、この年1月に発生した阪神淡路大震災の直後に描かれたもの。山田先生の仕事場があるのは京都ですが、それでも震災の影響があり画材がだめになってしまったそうで、色数が少ないのはそのせいなのだとか。と、どこかで人づてに聞いて以来、筆者にとっては「震災からの復興をイメージして描かれた一枚」として、記憶に残る絵になっています。)

113) 「山田章博の世界 ~ラーゼフォンアートワークス~」 ソフトバンク/2003年
https://bookmeter.com/books/114139
(** 本家「山田章博の世界」の第2集。山田先生がキャラクターデザインを担当した、出渕裕監督作品「ラーゼフォン」のイラストや設定資料が集成されています。「色彩感あふれる鉛筆画の世界」という惹句で、画集の「装画」までもが鉛筆画という凝った一冊。巻末の「ワールドメモ」では、キャラクターデザインをするにあたっての山田先生の「深掘りの仕方」に触れることができますが、こういうの、やっぱり楽しいですよね。同時期に制作されて、山田先生がその作業にてんてこまいの日々だったふたつのTVアニメ、「ラーゼフォン」と「十二国記」。「十二国記」の方も、いつの日かこんなアートワークスが刊行されると嬉しいのですが。)

114) 「エクスカリバー」 Game Graphix別冊/大日本書籍/1987年
https://www.suruga-ya.jp/product/detail/ZNON3425
(** 雑誌「Game Graphix」の別冊として刊行されたRPG究極本「エクスカリバー」は、萌芽期にあった本邦のTRPGをめぐる状況が垣間見える、TRPG史を専攻される方が重宝しそうな一冊。山田先生は表紙と裏表紙を担当されていて、アールヌーヴォー風の意匠が組み込まれているのが印象的です。なお、この「エクスカリバー」の編集長を務めていらしたのは、実はゲームブック「女魔法使いフィルス 聖なる樹を求めて」(朝日ソノラマ Hello Challenger Book/1985年)の武田邦人先生。こちらも山田先生が「装画」と「挿絵」を描かれています。80年代半ばに刊行された「フィルス」と「エクスカリバー」。やがて「ファリスの聖女」へと至る、西洋風ファンタジーの絵を探し求める山田先生の足跡を見るようで、どちらもなかなか興味深いです。)

115) 「おぼろ探偵帖」 マイコミックス/東京三世社/1991年
https://www.suruga-ya.jp/product/detail/504020588
(** これまでに三度単行本化されている「おぼろ探偵帖」。このマイコミックス版は「すうべにいる」や「ふぁんたすてぃか」と同じA4判で、かなり原画に近い大きさなのではないかと思われます。お薦めの一冊。確認をとったわけではありませんが、小野先生が耽読されたというのは、年代的にはおそらくこの版でありましょう。のちの単行本化の際に添えられた「おぼろ雑想帖・解題」によれば、「夜雀」は少年時代の山田先生が高知の郷土資料館で読んだ民間伝承の本から見いだされたものとの事ですが、おそらくその原話は「土佐民話の会」の機関誌「土佐の民話」に掲載されたもの。のちに市原麟一郎先生の「土佐の妖怪」(一声社/1977年・1981年)の「道に出る妖しの巻」に収録された、「たもと雀」と「夜雀の話」がそれであろうと思われます。こうして南国土佐から山田先生の手引きで連れ出された「夜雀」が、明治東京で活躍した「おぼろ探偵帖」でしたが、実はその後「現代日本マンガ展」(主催:国際交流基金/1999年~2003年頃まで開催)という企画展で、古今の名作短編漫画のうちの一作としてピックアップされる事となりました。その「第一話」が複製原画パネルとなって、フランス・パリとオランダ・ロッテルダムを手はじめに、ドイツやイギリスなどの欧州諸都市を巡った夜雀一行。一部の会場では特に展覧会の紹介画像に採用されていたりして、妖怪ならぬ現代日本文化紹介の先遣りのお役目、無事に果たしていたようです。)

116) 「夢の博物誌a」 ペーパーコミックス/日本エディターズ/2001年
https://bookmeter.com/books/371277
117) 「夢の博物誌b」 ペーパーコミックス/日本エディターズ/2001年
https://bookmeter.com/books/371278
(** 「夢の博物誌」は、主に80年代中盤に発表された山田先生の短編漫画作品がまとめられた単行本。こちらも三度刊行されていて、本棚にある「a」と「b」は二度目の単行本化の際のもの。サイズはB5判で、他のヴァージョンよりちょっと画面が大きいです。また「b」では東京三世社版の「続」にあった「女子日常作法-応用篇- 武子さまをめぐるいくつかの出来事」が「雑想」に差し替えられており、何というか山田先生のたいへん素直なお気持ちを拝見する事ができます。最新版の幻冬舎コミックス版では2冊がまとまった単巻での刊行となっていて、また少し雰囲気が変わっていますね。「夢の博物誌」掲載作はバラエティに富み、そして名作揃いですが、筆者は中でも「地下鉄で海へ」を愛読しています。なお「おぼろ探偵帖」が連載された東京三世社の隔月刊雑誌「漫画 夢の博物誌」(1990年)は、この単行本「夢の博物誌」シリーズとは無関係。このあたり、なんだか妙にややっこしいんですよね。)

118) 笹間良彦 編 「資料 日本歴史図録」 柏書房/1992年
http://www.kashiwashobo.co.jp/book/b227520.html
(** 帯の惹句に曰く「古代から江戸時代まで豊富な絵図で綴る生活パノラマ」。小学生向けの歴史学習への活用まで視野に入れたというビジュアル歴史資料集で、言うなれば教科書の副読本のスペシャル版です。絵や図が主役ですが、その「部分名称(名所)」がきちんと記されているのが特色。和物の絵を描かれる向きにはかなり参考になりそうな一冊。オススメです。)

119) 「武器 ─歴史・形・用法・威力」 マール社/1982年
https://www.maar.com/shop/visual/history/武器

120) 「戦略戦術兵器事典1 中国古代編」 歴史群像グラフィック戦史シリーズ/学研/1993年
https://bookmeter.com/books/448088
(** 殷周から三国志の時代までの中国での戦争にまつわる諸事(戦略、戦術、兵器、人物)が、グラフィカルにまとめられた一冊。武器の変遷の図示や、歴史上有名な戦いでの各陣営の動きを地図上に示したものなどが掲載されていて、本書もなかなか興味深いです。山田先生が青い鳥文庫の「三国志」の絵を描かれる際には、とても重宝されたのではないでしょうか。)



≪ Ⅶ-4 右側下段 ≫ (*上から)

121) 「オウガバトルサーガ コミックアンソロジー」 エニックス/1999年
https://www.suruga-ya.jp/product/detail/WR233
(** 画面上では背表紙の一番下の部分の「エニックス」のロゴしか見えませんが、おそらくⅦ-3ブロックにある画集などの「台」になっているのはこの本です。スーパーファミコン用ソフト「伝説のオウガバトル」(クエスト/1993年)にはじまる「オウガバトルサーガ」シリーズのアンソロジー本。山田先生は「装画」を担当。デフォルメ具合がちょっと珍しい一枚です。)

122) 「ミスティックアーク まぼろし劇場 座長の攻略裏日誌」 覇王ゲームスペシャル150/講談社/1999年
https://www.suruga-ya.jp/product/detail/179002146
(** プレイステーション用ソフト「ミスティックアーク まぼろし劇場」(エニックス/1999年)の攻略本。画集「ミスティックアーク アートワークス」にイラストは集成されていますが、ゲーム内に展開される「山田章博の世界」を堪能したいという向きは、ぜひミスターシルバーフィンガーチップスから「親愛なる迷える仔羊」に贈られたこの一冊をお手元に。攻略本は、ほかには「ミスティックアーク まぼろし劇場 公式ガイドブック」(エニックス/1999年)も刊行されています。)

123) 「テラファンタスティカ 必勝攻略法」 セガサターン完全攻略シリーズ16/双葉社/1997年
https://www.suruga-ya.jp/product/detail/179008178
(** セガサターン用ソフト「テラ ファンタスティカ」(セガ/1996年)の攻略本。画集「ファンタジー アートワークス」に多くの関連イラストが収録されている「テラ ファンタスティカ」ですが、この「必勝攻略法」でも巻頭の登場人物紹介にたくさんのキャラクターが掲載されていて楽しめます。攻略本は、ほかにはファミ通Bros.攻略本シリーズ「テラ ファンタスティカ 完全勝利への軌跡」(アスペクト/1997年)も。こちらは山田先生の絵は少ないからいいかな…と思いきや、実はカバー下の表紙には、他では収録されていないディーネのイラストが。山田絵を探求されている方は、ぜひお探しいただければ。なお「テラ ファンタスティカ」の原案・構成を担当された門倉直人先生は、本邦のオリジナル作品としては最初期のTRPG「ローズ トゥ ロード」のデザイナー。山田先生はその「ローズ トゥ ロード」のPC98版ソフト「忘れえぬ炎」(遊演体/1996年)でも、西崎まりの先生とともにキャラクターデザインを担当しています。こちらの関連イラストは、画集「ファンタジー アートワークス」やTRPG「ファー・ローズ・トゥ・ロード」サプリメントNo.5「大旗戦争」に収録されていますので、機会があればぜひご覧あれ。)

124) 「フロントミッション3 最速攻略本 for beginners」 デジキューブ/1999年
https://www.suruga-ya.jp/product/detail/179003584
(** プレイステーション用ソフト「フロントミッション3」(スクウェア/1999年)の攻略本。デジキューブの攻略本は、ほかに「プラチナ エキスパートマニュアル」も刊行されましたが、この「最速攻略本」の方が、より多くのキャラクターイラストが掲載されている印象。さらにたくさん山田先生のフロントミッションの画稿を見てみたい、という向きには、貴重なラフ画まで収録された「front misson 3 PERFECT WORKS」(デジキューブ/1999年)や、シリーズの総合的な資料集である「フロントミッション ワールドヒストリカ」(メディアワークス/2007年)がお薦めです。)

125) スペイン語版 「ロードス島戦記 ファリスの聖女Ⅰ」 Planeta-DeAgostini/1996年/ Record of Lodoss War LA DAMA DE FARIS
https://www.tebeosfera.com/colecciones/record_of_lodoss_war_1996_planeta-deagostini_-la_dama_de_faris-.html
(** 数々の海外版が存在する「ファリスの聖女」。こちらはスペイン語版の「ドラゴンコミックス版」です。日本語版の1994年の発売を受けて、2年後の1996年にはこのスペイン語版とフランス語版、そして台湾版が相次いで刊行されました。これらが、最初期の海外版「ファリスの聖女」ということになります。1996年刊のスペイン語版では、擬音はすべてスペイン語バージョンに描き換えられていて、日本の読者から見るとなかなか新鮮。2006年に高知で開催された「山田章博展 -幻想空間へのいざない-」では、ちょっと誇らしげに(?)展示されていたのが印象的でした。最初期の「ファリス」海外版という事もあって、山田先生の本棚の中でも特別な意味を持つ一冊なのかもしれません。)

126) スペイン語版 「ロードス島戦記 ファリスの聖女Ⅰ 新装版」 Planeta DeAgostini/2004年/ Record of Lodoss War La Dama de Faris Ⅰ
https://www.amazon.es/dp/8467407964/
127) スペイン語版 「ロードス島戦記 ファリスの聖女Ⅱ」 Planeta DeAgostini/2004年/ Record of Lodoss War La Dama de Faris Ⅱ
https://www.amazon.es/dp/8467407972/
(** 海外版「ファリスの聖女」のスペイン語版。この2004年刊の新装版の方では、擬音は日本版のままです。筆者はスペイン語が読めるわけではありませんが、1996年版と比較してみると、翻訳された台詞の文言が同じスペイン語でもかなり違っている事がわかります。それぞれの翻訳者による解釈の違いという事になると思いますが、言語の世界の豊穣さが垣間見えて、なかなか興味深いものがあります。翻訳、やはり単純なものではないんですね。)

128) スペイン語版 「ロードス島戦記 ファリスの聖女Ⅱ」
129) スペイン語版 「ロードス島戦記 ファリスの聖女Ⅰ 新装版」
(** この2冊も120・121と同じ、「ファリスの聖女」の「ニュータイプ100%コミックス」からのスペイン語翻訳版。背表紙から判断する限り、特に違いがあるようには見えないので、なぜ同じ本がこの本棚に積まれているのかはよくわかりません。高さの調整にちょうどよかったんでしょうか…?)

130) 韓国語版 「ロードス島戦記 ファリスの聖女Ⅰ 新装版」 大元CI/2002年
http://www.yes24.com/product/goods/308188
(** 本棚最後の一冊も、海外版「ファリスの聖女」。こちらは韓国版の新装版で、擬音はすべてハングルに描き換えられています。本棚には見当たりませんが、ちゃんとⅡ巻も刊行されていますのでご安心を。ちなみにこの韓国版「ファリスの聖女」、レーベルとしてはあちらの「DRAGON COMICS」からの刊行となっていまして、つまり「ニュータイプ100%コミックス版」の「ドラゴンコミックス版」。文章で説明しようとすると、なんだかよくわからない事になってしまったりもするのでした。)



≪Poscritto≫
以上、作画風景の背景に映る「本棚」の背表紙を見て、あれこれ思い浮かんだ事などを雑多に書き記してみました。
棚の周辺に存在している事が見て取れるアイテム130点のうち、
83点は山田先生の漫画やイラストが掲載されているもの、
21点が作画や作品構想の資料とみられるもの、
22点が関係する作家の方の作品などで、
4点が詳細未詳という感じでした。
有名なものから、あまり知られていないものまで、この「本棚」は広範で豊穣な山田先生の作品世界を紹介するショーケースになっていたように思います。気になったものがあれば、書店などで実際に手に取ってみてくださいね。

また、記事や動画をご覧になって「描くぞ!」と思われた方向けに重要そうな資料も。赤色の番号の資料がそれです。
しかし、わずかこれだけの冊数で、深く考証を重ねた絵を描くのは困難な気が。
ここに置かれていたのは、おそらく基礎中の基礎資料、あるいはちょっと面白い資料と山田先生が考えられているもの。
少しばかり価格がお高めのものもありますので、「参考にするぞ!」と思われた向きは、まず図書館などで探してみてはいかがでしょう。



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文責:初音むつな (魔法使いの弟子の見習い書記官)
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